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相続税の計算方法をわかりやすく解説!計算する際の3つの注意点とは

令和2年度の相続税の平均納税額は1,700万円と高額であるにもかかわらず、相続税の納税は、相続開始から10か月と期限が定められている。そのため高額な納税額をすぐに準備できる方も少ないのではないだろうか。

多くの方は、「相続が発生する前に納税額を把握しておきたい」と思うだろう。一見、相続税の計算は複雑だと思われがちであるが、自身で計算することも可能である。

そこで今回、相続税の計算方法を紹介する。また計算する上で注意しなければいけないポイントも3つ重ねて解説する。相続税の納税額が知りたい方はぜひ本記事で計算できるようにしてほしい。

目次

相続税を計算する必要性

相続税の計算をする必要性は以下の3つが挙げられる。それぞれの内容について解説する。

相続税は10か月以内に納税義務がある

相続税は、相続が発生してから10か月以内に申告と納税をしなければいけないと定められている。しかし、相続が発生してから申告までにはさまざまな手続きがあるため、期限までの日数は非常に少ない。さらに相続人同士で遺産トラブルなどが発生すると、話し合いがまとまらず期限に間に合わないことも多い。ただし、概算の金額で納税することも可能なため、あらかじめ相続税の計算をしていた方が良いだろう。

また納税以外にも期限が定められている相続手続きも多いため、これから相続手続きをする方は、事前に「期限がある7つの相続手続きとは?相続税の申告期限が過ぎた際のペナルティを解説」を確認してほしい。

基礎控除額以上の遺産であれば計算する必要がある

相続税は基礎控除額以上の遺産総額であれば、納税が課せられる可能性も高いため、相続税額を算出しなければいけない。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と定められている。

すなわち、法定相続人が3人の場合は4,800万円、4人の場合は5,400万円となる。遺産総額が基礎控除額未満であれば相続税は発生しないものの、基礎控除額以上であれば課税対象となるため納税義務が発生する。

とはいえ、基礎控除額以外にも差し引ける項目の金額もあるため、詳しく知りたい方は「相続税の基礎控除額の仕組みとは?基礎控除額を計算する際の4つの注意点を解説」を確認してほしい。

納税しなかった場合にはペナルティが課せられる

相続税を10か月以内に納税しなかった場合、以下のペナルティが課せられる可能性がある。

延滞税納付期限が過ぎてしまった際に課せられる
過少申告加算税申告漏れがあった際に課せられる
無申告加算税正当な理由なく申告と納税しなかった場合に課せられる
重加算税相続税の申告と納税を悪質な行為によって隠蔽や偽装した時に課せられる

それぞれのペナルティについて詳しく解説していく。

  • 延滞税

延滞税は名前の通り、納税を延滞した際に課せられる税金である。未納額(延滞している金額)に対し、税率と延滞日数をかけ、1年間で割り出した金額である。具体的な計算方法は以下の通りだ。

延滞税=(未納額×税率×延滞日数)/365日

ここでの税率は納税期限の翌日から2か月を境に以下の通り定められている。

本則税率令和4年度内
納税期限の翌日から2ヶ月まで14.6%2.4%
納税期限の翌日から2ヶ月以降7.3%8.7%

例えば未納額が300万円と仮定し、90日延滞日数が経過すると「300万円×8.7%×90日/365日⁼64,356円」となる。延滞税は延滞日数が長いほど納税額が大きくなる。また税率も数年に一度変更があるため注意してほしい。

  • 過少申告加算税

過少申告加算税は納税額を過少に申告した場合に課せられる税であり、税務調査の事前通知の前後と、新たに納める納税額が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額に対して税率が異なる。詳しくは以下の表の通りである。

申告条件当初の申告相続税額または50万円以下の多い方で未満の部分当初の申告相続税額または50万円以下の多い方で超える部分
税務署からの事前通知を受けてから修正申告した場合5%10%
税務署からの事前通知を受け、修正申告と更正をした場合10%15%
  • 無申告加算税

無申告加算税は申告しなかった際に課せられる税金であり、税務調査前でかつ相続税額50万円を境に以下の税率が定められている。

申告条件相続税額のうち50万円以下の部分相続税額のうち50万円以上の部分
税務調査の事前調査前に事前申告した場合5%
税務調査を受ける前に自主申告した場合10%15%
税務調査後に申告した場合15%20%
過去5年以内に無申告加算税または重加算税を重ねたことがあり、税務調査を受けて申告した場合
25%

30%
  • 重加算税

重加算税は悪質な行為として申告しなかった際に課せられる罰則である。過少申告と無申告によって以下の税率が課せられる。

重加算税(過少申告)35%
重加算税(無申告)40%

相続税の計算方法ステップ①

ここからは相続税の計算方法を紹介する。ステップ①ではどれくらいの遺産が課税対象額となるかを算出する。大枠の課税対象額の計算方法は以下の通りである。

課税対象額=遺産の合計額-基礎控除額-非課税財産-債務及び葬式費用

次の項から詳しく解説する。

遺産の合計額を算出する

はじめに被相続人に遺産合計額を算出する。遺産に含まれるものは以下の項目が主に該当する。

  • 現金
  • 預貯金
  • 不動産
  • 有価証券
  • 自動車
  • 貴金属
  • 絵画など

また上記の遺産の他に相続または遺贈によって取得したものとみなされた財産(みなし財産)も遺産総額に含まれる。具体的には生命保険金や死亡保険金などである。すべての遺産総額を合算した評価額が、被相続人の遺産合計額となる。

基礎控除額を差し引く

遺産総額の算出ができた後は遺産合計額から基礎控除額を差し引く。基礎控除額は以下の計算式で算出可能だ。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除額は法定相続人の数によって金額が異なる。法定相続人については「相続人になる人は決められている?相続人の優先順位とは」にて解説している。

非課税財産などを差し引く

基礎控除額を差し引いた金額からさらに非課税財産を差し引く。非課税財産とは社会政策的な見地から課税対象とするのが適切ではない財産であるものだ。具体的には以下の3つが挙げられる。

  • 相続人が取得した生命保険金・死亡退職金などのうち、「500万円×法定相続人の数」の金額
  • 祭祀財産である墓所や仏具費用など
  • 公共事業を行うために相続や遺贈により取得した財産でかつ公共事業用財産など

債務及び葬式費用

被相続人が金融機関から借入していた場合、負債を全額遺産総額から差し引くことが可能となる。また葬式費用やお通夜などの弔問客への食事代なども差し引ける。ただし墓地の購入費用や香典返し費用などは該当しない。

相続税の計算方法ステップ②

課税対象額の算出ができた後は、法定相続人の納税額を算出する。ステップ②では相続税額の算出を行う。

課税対象額を法定相続人で按分する

課税対象額を法定相続割合に応じて按分し、各人の取得金額を算出する。例えば配偶者と子ども2人が法定相続人の場合、配偶者は1/2、子ども一人あたり1/4を取得する。配偶者は通常1/2の財産を取得するが法定相続人によって法定相続割合が異なるため、下記の表を参考にしてほしい。

法定相続人配偶者子ども兄弟姉妹
配偶者のみ100%
子どものみ100%(子どもが2人の場合は50%ずつ)
親のみ50%ずつ(片親は100%)
兄弟姉妹のみ100%(兄弟2人なら50%ずつ)
配偶者と子供50%50%(2人なら25%ずつ)
配偶者と親66%(2/3)16.5 %ずつ(1/6)
(片親は33%)
配偶者と兄弟姉妹75%(3/4)25%を兄弟たちで按分(2人なら12.5 %ずつ)

法定相続分で分けた取得金額に税率をかけ控除額を差し引く

各人の取得金額が分かった後は金額に合わせて下記の税率をかけ、控除額を差し引く。

法定相続分に応ずる取得金額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円
出典:国税庁「相続税の税率」より一部引用

例えば配偶者の取得金額が1,500万円の場合、「1,500万円×15%-50万円⁼175万円」が納税額となる。しかし配偶者には配偶者控除があるため、納税しなくて済むケースも多い。配偶者控除とは配偶者が取得する遺産が「課税価格の合計額×法定相続分」または「按分して取得した遺産額が1億6千万まで」は課税されない特例である。すなわち配偶者は法定相続分以上でかつ1億6千万以上の取得金額でない限り納税義務が発生しない。

その他、相続税には贈与税額控除や未成年者控除、障害者控除などさまざまな減額処置がある。控除内容を知りたい方は「相続税額はどのように計算する?自分でできる相続税シミュレーションを紹介」を確認してほしい。

相続税の計算をする際の3つの注意点

これまで相続税の計算方法について解説してきたが、相続税の計算をするうえで以下の3つの点に注意する必要がある。

財産の見落としがないか注意する

相続税の計算をする際は課税対象となる財産の見落としがないか十分確認する必要がある。特に相続税の課税対象となる不動産は非常に大きな評価額となるため、1つ見落とししてしまうと大きく納税額が変わってしまう。そのため必ず財産漏れがないか確認する必要がある。不動産を調べたい場合、市役所や役場で所有不動産を確認できる名寄帳が取得可能だ。委任状があれば代理人でも取得できるため、必ず確認してから納税額を計算した方がよいだろう。

2割加算に注意する

法定相続分で計算したものの、下記に該当する方は納税額に2割加算した金額を納める必要がある。

  • 兄弟姉妹
  • 祖父母
  • 代襲相続した孫

相続税の2割加算は配偶者や子ども、両親などは該当しない。しかし血族関係のある兄弟や祖父母などが該当する。その他血族関係のない第三者に相続する際も同様となる。

税理士などの専門家に相談する

相続税の計算は自身で行うことが可能であるものの、細かな計算は税理士へ依頼することが望ましい。相続税の申告は正しい金額でなければ先ほど紹介したペナルティが課せられる要因にもつながる。

さらに不動産などの評価額を算出する場合はより専門性の高い計算が求められる。そのため自身で相続税を計算する際は概算金額とし、正確な金額は税理士へ依頼するようにすることが望ましい。

まとめ

今回、相続税の計算方法と3つの注意点について解説した。相続税の計算は正しい手順で行うことで算出できる。事前におおよその納税額が分かっていれば、いざ相続が発生した後でも対処できるようになるだろう。しかし実際の相続が発生した時は正しい納税額を算出する必要があるため、税理士などの専門家に依頼することをおすすめする。

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