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期限がある7つの相続手続きとは?相続税の申告期限が過ぎた際のペナルティを解説

相続が発生した後は相続手続きに移行し、相続税の申告と納税をしなければいけない。しかし申告までにはさまざまな手続きがあり、それぞれ期限が定められている。期限を知らずに相続手続きを進めてしまうと、後悔することにもなりかねず、ペナルティとして罰則が課せられる可能性も高いため、あらかじめ期限のある手続きを理解しておく必要がある。

そこで今回、期限が定められている7つの相続手続きを紹介する。また期限が設定されていない手続きと相続税の申告期限が過ぎた場合のペナルティを解説する。これから相続を控えている人はぜひ参考にしてほしい。

目次

期限のある7つの相続手続き

相続手続きは相続税の申告と納税まで行う必要がある。相続手続きについて詳しく知りたい方は「相続手続きの全体スケジュールとは?自分で手続きは出来るのか」を確認してほしい。

ここでは期限のある相続手続きを7つ紹介する。一度期限が切れると手続きできなくなる内容も多いため注意してほしい。

相続放棄(相続開始から3か月)

相続放棄とは相続人の相続権利を放棄することを指す。被相続人の中には現金や不動産のプラスの財産の他に、借入などのマイナス財産を保有しているケースもある。借入などの負債も相続財産に含まれ、相続した人は被相続人に代わって返済しなければいけない。

しかし相続放棄をすることで、財産を相続する権利を失うため、借入も引き継ぐことはなくなることになる。相続放棄は相続が発生したことを知った日の翌日から3か月以内に家庭裁判所へ申立てを行わなければいけない。相続放棄についてより詳しく知りたい方は「債務を相続しなくて済む相続放棄とは?概要と手順を紹介」を確認してほしい。

限定承認(相続開始から3か月)

限定承認とは被相続人の債務額が分からない場合、相続するプラスの財産の範囲内で債務を引き継ぐ方法である。相続放棄は相続に関する権利を失うのと違い、限定承認は相続するプラスの財産以下の負債を引き継ぐことになるため、相続権利は失わない。限定承認も相続開始日の翌日から3か月以内の申立てを行う必要がある。限定承認についてより詳しく知りたい方は「相続の限定承認を行うメリットとは?手続き方法を解説」を確認してほしい。

準確定申告(相続開始から4か月)

準確定申告とは被相続人が生前中していた年に以下に該当する所得があった場合、被相続人に代わって相続人の代表者が確定申告することである。

  • 事業所得や不動産所得など個人事業で所得がある場合
  • 給与収入が2,000万円以上ある場合
  • 給与収入が2か所ある場合
  • 給与所得や退職所得以外の所得が合計で20万円以上あった場合
  • 公的年金等の収入が400万円以上の場合

準確定申告は相続開始から4か月以内と定められている。一般的な確定申告は翌年の2月16日〜3月14日までとなっているため、期日を間違えないように注意してほしい。

遺留分侵害額請求(相続の開始および遺留分侵害を知ってから1年以内または10年)

遺留分侵害額請求とは法定相続人が最低限遺産を相続できる遺留分に相当する額を侵害者に請求することである。被相続人が作成した遺言書の内容が「特定の方(侵害者)に全て遺産を相続する」などの場合、他の相続人には不公平な相続となる。そのため配偶者や子ども、両親などは遺留分を主張することができ、最低限の遺産を相続することが可能だ。

遺留分を主張する場合は侵害者へ遺留分侵害額請求を行うことができるが、相続の開始および遺留分侵害を知ってから1年以内と定められている。また遺留分を侵害されている事実を知らなかった場合は相続開始から10年経過すると請求出来なくなる。遺留分について詳しく知りたい方は「相続人は遺留分でいくらもらえる?遺留分割合と請求方法について解説」を確認してほしい。

相続税の申告と納税(相続開始から10か月)

相続税の申告と納税は相続が発生した日または相続があった事実を知った日から10か月以内と定められている。例えば2月1日に亡くなった場合、12月1日が申告と納税期限である。ただし、12月1日が土日祝日である場合、翌日の平日が期限となるため注意してほしい。相続税の申告と納税について詳しく知りたい方は「相続税の申告を自分で行う流れと作成手順を詳しく解説!」を確認してほしい。

相続税の還付請求(相続の開始があったことを知った日の翌日から原則5年10ヵ月)

相続税を多く支払ってしまった場合は相続税の還付請求をすることが可能だ。ただし多く支払った相続税に関しては税務署から通知が来ることはほとんどないため、自身で気が付かなければいけない。特に相続財産の一つである不動産は財産評価の算出が難しく、納税額を間違えるケースが多い。

そのため相続税を納税した後であっても税理士に納税額を計算してもらった方が良いだろう。なお還付請求は5年と相続税の納税期限10か月を追加して5年10か月と定められている。

相続登記(2024年4月1日からは3年以内)

2022年減税では相続登記には期限が定められていないものの、2024年4月1日から義務化される。国交省の「国土交通省『平成30年版土地白書』より)」を確認すると日本には所有者不明の土地が全体の20%以上あり、固定資産税の未納が長年問題視されていた。さらに土地の収用問題や空き家などへの放火問題などもあるため、相続登記の義務化が2022年の4月28日に「民法等の一部を改正する法律(令和3年法律第24号)」で改正されたのである。

本法律により、相続開始日または相続を知った日から3年以内に相続登記しなければいけない。期限が過ぎると、10万円以下の過料が課せられるため注意が必要である。相続登記に関しては「相続登記に必要な8つの書類とは?必ず間違えてはいけない3つの注意点も解説」でより詳しく解説している。

期限がない相続手続き

期限がある相続手続きが多い一方、期限が定められていない手続きもある。そのため後回しにする方もいるが、一日でも早く手続きする

遺産分割協議

遺産分割協議には期限が定められていないため、後回しにする相続人もいる。しかし遺言書もなく、誰がどの遺産を相続するか決まっていない場合は遺産分割協議を行わなければ相続手続きを進めることはできない。つまり相続税の申告と納税もできず、後ほど紹介するペナルティの対象になるだろう。そのため相続発生後は遺産分割協議をいち早く進める必要がある。遺産分割協議の進め方について知りたい方は「相続発生後に遺産分割協議を行う理由とは?協議書の作成方法と注意点を解説」を確認してほしい。

遺産分割の異議申し立て

遺産分割協議に期限が無いということは遺産分割に不満があった場合の遺産分割の異議申し立てにも期限が定められていないことを意味する。遺産分割の異議は「特別な事情」や「相続人から脅迫があった遺産分割協議」だった場合などに申し立て可能となる。しかし相続発生から15年や20年と年数が経っている場合は、申し立てできない可能性も高いため注意が必要である。

相続税の申告期限が過ぎた場合のペナルティ

相続税の申告と納税期限が過ぎた場合はペナルティが課せられる。また相続税は連帯納付の義務があるため、1人でも相続税を支払わないと、他の相続人にも影響を及ぼすことになる。そのため相続人は申告期限が切れた場合のペナルティを理解しておく必要があるだろう。ではどのようなペナルティがあるのだろうか。ここでは4つ紹介する。

延滞税

相続税の申告と納税が1日でも過ぎた場合は延滞税が課せられる。延滞税は以下の計算式で算出することが可能だ。

延滞税=(未納額×税率×延滞日数)/365日

延滞税の税率は、延滞した期限から2か月を境に税率が異なり、以下の表の通り定められている。

本則税率令和4年度内
納税期限の翌日から2ヶ月まで14.6%2.4%
納税期限の翌日から2ヶ月以降7.3%8.7%

例えば未納額が100万円と仮定し、延滞日数が70日と仮定すると、「100万円×8.7%×70日/365日=1万6,685円」となる。延滞税は延滞した日数が長くなるほど、納税額が大きくなるため注意しなければいけない。

無申告加算税

無申告加算税は正当な理由なく相続税を申告しなかった場合に課せられる。納税額は以下の計算式で算出できる。

無申告加算税 = 納税額×税率

無申告加算税は無申告の納税額が50万円を境に、かつ税務署からの事前調査のタイミングで税率が異なる。詳しくは下記の表を参考にしてほしい。

申告条件相続税額のうち50万円以下の部分相続税額のうち50万円以上の部分
税務調査の事前調査前に事前申告した場合5%
税務調査を受ける前に自主申告した場合10%15%
税務調査後に申告した場合15%20%
過去5年以内に無申告加算税または重加算税を重ねたことがあり、税務調査を受けて申告した場合
25%

30%

過少申告加算税

相続税は多く支払った場合は還付を受けることが可能となるが、一方で過少に納税した場合は過少申告加算税が課せられる。過少申告加算税は過少額に対して税率を掛けた値を納税する。税率は以下の通りである。

申告条件当初の申告相続税額または50万円以下の多い方で未満の部分当初の申告相続税額または50万円以下の多い方で超える部分
税務署からの事前通知を受けてから修正申告した場合5%10%
税務署からの事前通知を受け、修正申告と更正をした場合10%15%

例えば過少額が100万円で税務署から事前通知を受けて修正申告した場合、「100万円×10%=10万円」となる。さらに修正申告した相続税を支払うことになるため、過少申告加算税と過少分の相続税を支払うこととなる。

重加算税

重加算税は意図をもって過少申告や無申告した場合に課せられる税金である。申告していない相続税に対し、以下の税率を掛けた金額を納税しなければいけない。

重加算税(過少申告)35%
重加算税(無申告)40%

さらに相続税の申告を隠蔽や偽装した場合は脱税とみなされ、刑事罰にもなりかねないため注意してほしい。

まとめ

 今回、期限が定められている7つの相続手続きとペナルティを紹介した。相続税は10か月以内に申告と納税をしなければいけないが、その途中には期限が定められている手続きも多い。そのため相続手続きを行う前に、あらかじめ期限が定められている手続き内容を理解しておく必要がある。

また期限内に申告しなかった場合は、さまざまなペナルティが課せられるため、相続税の申告と納税期日には注意が必要である。

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