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相続後に必要な確定申告の事例とは?申告時の必要書類も解説

相続が発生した後は、相続税の申告と納税を行う。しかし場合によっては確定申告が必要となるケースもある。相続後に確定申告が必要だったものの、申告しなかった場合は罰則などのペナルティが課せられるため、あらかじめ申告しなければいけないケースは理解しておくべきだろう。

また申告時にはさまざまな書類が必要となるため、何が不足しているか分からなくならないようにあらかじめ必要書類は把握しておくことが望ましい。ではどのような場合に確定申告をしなければいけないのだろうか。

そこで今回は、相続後に確定申告が必要な事例と必要書類について解説する。これから相続を控えている人や、相続手続きが完了した人はぜひ参考にしてほしい。

目次

確定申告は必要か?

相続において確定申告は必須であるか疑問に思う方もいるだろう。ここでは確定申告の必要性と相続申告との違いについて解説する。

確定申告は原則不要

相続後は原則確定申告は不要である。相続人となった人は、財産を得ることになるため確定申告が必要かと思う人も多い。しかし、相続によって得る財産は相続税の課税対象となるため、確定申告は不要となる。そもそも確定申告は所得税・住民税を支払うための手続きであるため、相続という観点では趣旨が異なる。しかし被相続人が生前中に所得があった場合、つぎで紹介する準確定申告を相続人は行わなければいけない。

準確定申告とは

被相続人が生前中に所得があった場合、相続人の代表者が被相続人に代わって確定申告を行うことを準確定申告という。準確定申告は1月1日から被相続人が亡くなった日までの期間の所得について申告を行う。さらに、1月1日から3月15日までの間に前年分の確定申告をしていなかった場合、前年分の準確定申告も行う必要がある。準確定申告は相続が発生した日または相続があったことを知った日の翌日から4か月以内に申告しなければいけない。また申告する人の条件は以下の項目に該当している方となる。

  • 給与所得、退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えた場合
  • 事業所得や不動産所得があった場合
  • 土地や建物を売却して所得を得ていた場合
  • 給与所得が2,000万円を超えた場合
  • 2箇所以上から給与を得ていた場合
  • 保険の満期金・一時金などを受け取っていた場合
  • 公的年金などによる収入が400万円を超えていた場合
  • 公的年金による雑所得以外の所得金額が20万円を超えた場合

確定申告と相続申告の違い

そもそも確定申告と相続申告の違いはどのような点が挙げられるのだろうか。確定申告は1月1日〜12月31日までの1年間の所得に対して課せられる税金である。ただし所得の合計額から基礎控除額48万円を差し引けるため、48万円以下であれば非課税となる。さらに扶養控除や医療費控除などさまざまな控除の適用によって非課税となるケースも多い。

一方、相続税は被相続人が保有していた遺産に対して課税される税金である。相続税にも基礎控除額があり、最低3,600万円となる。つまり基礎控除額以下の遺産総額であれば相続税は課税されることもなく、申告も不要となる。相続税の基礎控除額について詳しく知りたい方は「相続税の基礎控除額の仕組みとは?基礎控除額を計算する際の4つの注意点を解説」を確認してほしい。

確定申告が必要な相続事例とは

では相続発生時に確定申告が必要となるのはどのような事例が挙げられるのだろうか。ここでは5つのケースを紹介する。

相続した不動産を売却した場合

相続した不動産を売却し、利益が出た場合は譲渡所得税の課税対象となるため確定申告が必要となる。譲渡所得税は以下の計算式で算出できる。

課税譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)譲渡所得税=課税譲渡所得×税率

取得費は被相続人が不動産を取得した費用が該当するが、取得費が分からない場合は売却価格の5%となる。譲渡費用は売却時にかかった仲介手数料や印紙代金などが当てはまる。税率に関しては不動産を相続してから5年未満に売却した場合は短期譲渡所得と扱われ、税率は39%となる。5年以上であれば長期譲渡所得とみなされ、税率は20%となる。どちらにせよ、相続した不動産を売却して利益が発生した場合は課税対象となるため確定申告が必要である。譲渡所得税の計算方法は「相続した土地を売却した場合の税金計算方法と売却手順を紹介」にてより詳しく解説している。

収益物件を相続した場合

相続した不動産が賃貸アパートや月極駐車場などの収益物件の場合、確定申告が必要となる。不動産収入などは所得税と住民税の課税対象となるため、翌年の2月16日から3月14日までの間に申告しなければいけない。また、相続が発生してから不動産を相続する人に名義変更するまでの間は、相続人全員の共有財産となる。共有財産となった不動産から得られる収入は法定相続分で分割し、各人が確定申告をする必要がある。

相続した遺産を寄附した場合

相続した遺産を寄付した場合、確定申告は義務ではないものの、所得税の寄付金控除の適用が可能となり節税効果につなげることが可能となる。ただし寄付金控除の対象となる寄付先は定められており、寄付をした団体から受領証をもらう必要がある。

<寄付先>国・都道府県・市町村・公益財団法人・公益社団法人・社会福祉法人・政党・政治資金団体など

相続した遺産を換価分割した場合

換価分割とは不動産を売却して現金に換えてから複数人で相続する方法であり、収入に対して所得税と住民税が課税される。相続した不動産は分割するのが難しく、売却して現金にした方が遺産分割しやすくなるが、譲渡所得税の課税対象となるため確定申告が必要となる。不動産の遺産分割について詳しく知りたい方は「不動産を遺産分割する4つの方法と3つの注意点について解説!」を確認してほしい。

未支給年金・死亡保険金を受け取った場合

未支給年金は一時所得として扱われ、50万円の特別控除がある。そのため50万円以上であれば確定申告が必要となる。また保険金の負担者と受取人が同一人物で死亡保険金を受け取った場合、一時所得または雑収入として扱われるため所得税が課税対象となる。ただし、保険金の負担者と受取人によっては相続税や贈与税などの課税対象となるため注意してほしい。

確定申告の必要書類とは

確定申告は税理士などの専門家に依頼することも可能であるが、必要書類は自身で準備する書類も多いため、あらかじめ理解しておく必要がある。ここでは確定申告の必要書類を含め、申告手順について解説する。確定申告に必要な書類は以下の通りである。

  • 確定申告書AまたはB
  • 収支内訳書/青色申告決算書
  • 控除証明書(保険料控除明細書、医療費控除の明細書、寄付金の受領証など)
  • 源泉徴収票(給与、年金など)
  • 身分証明書類(マイナンバーカード、通知カードと運転免許証など)

それぞれの書類について解説していこう。

確定申告書AまたはB

確定申告書にはAとBの2種類あるが、不動産所得などがある場合はBを使用する。サラリーマンなどの給与所得がある方はAを利用する。詳しくは下記の表を参考にしてほしい。

主な申告対象者申告できる所得
確定申告書A給与所得者など給与所得、雑所得、配当所得、一時所得
確定申告書B上記以外の方、個人事業主などすべての所得

収支内訳書/青色申告決算書

相続した不動産から所得があった場合、収支内訳書または青色申告決算書が必要となる。書類を準備することで正しく申告することができ、所得計算において有利な取扱いが受けられる青色申告などを行うことも可能となる。青色申告する場合は青色申告決算書が必須となり、青色申告書がない場合は白色申告となり、収支内訳書を確定申告に添付する。

控除証明書(保険料控除明細書、医療費控除の明細書、寄付金の受領証など)

確定申告する際は控除証明書を添付することで、所得税の節税につながる。主な控除と必要書類は以下の通りである。

控除名必要書類
社会保険料控除控除証明書源泉徴収票
生命保険料控除生命保険料控除証明書
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済等掛金控除払込証明書
医療費控除医療費控除の明細書医療費通知書など
地震保険料控除地震保険料控除証明書
雑損控除被害額届出用の証明書り災証明書など
寄附金控除寄付した自治体から発行される寄付金の受領書または領収書ふるさと納税サイト運営会社が発行する特定寄付金の証明書

所得を証明できるもの

確定申告では収支内訳書などを作成するものの、所得の根拠となる書類が必要である。不動産には経費になるものも多いため、あらかじめどのような書類が必要か理解しておく必要がある。また所得によって必要書類は異なるため、下記の表を参考にしてほしい。

家賃収入がある場合売却利益が発生した場合
レントロールなど(不動産収入・家賃収入がわかる書類・資料)
必要経費がわかる書類・資料・領収書等
金融機関からの返済予定表(借入がある場合)
売買契約書
被相続人が不動産を取得した時の領収書
仲介手数料の領収書
その他必要経費となる書類

不動産収入がある場合は、毎月の収入がわかるレントロールや賃貸借契約書のコピーなどを添付する。また固定資産税の支払い証明書や不動産会社への管理費なども必要経費とみなされるため、不動産に関する書類は全て用意していた方が良いだろう。

一方、不動産を売却して利益が発生した場合、売買契約書と取得費が分かる書類、売買時に支払った仲介手数料などの領収書が必要だ。書類の提出をしないと多く所得税を支払うことになるため、注意してほしい。具体的な必要書類は税理士に確認した方が良いだろう。

身分証明書類(マイナンバーカード、運転免許証など)

本人確認できる書類が必要である。マイナンバーカードは必須ではないものの、確定申告を電子申告(e-Tax)で行えるメリットもある。

まとめ

今回は相続後に必要な確定申告の事例と申告時に必要な書類について解説した。確定申告が必要なケースは収益物件を相続した場合や不動産を売却して利益が発生した場合などが該当する。また確定申告時にはさまざまな書類が必要となる。

普段から意識していないと書類を破棄してしまい、申告時に不利益になる可能性も高いため注意してほしい。

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