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相続手続きの全体スケジュールとは?自分で手続きは出来るのか

相続税は財産を所有している方が亡くなってから10か月以内に申告と納税を行わなければいけない。一見10か月と聞くと時間に余裕があるように思えるが、相続ではたくさんの手続きと作業があるため、決して十分な期間であるとは言えがたい。では実際どのような手続きがあるのだろうか。

本記事では相続手続きの全体スケジュールと作業内容を紹介する。また相続手続きを自分で行うべきか検討している方に向けて、自分で行う場合と専門家に依頼する場合のメリット・デメリットも解説する。これから相続を控えている方は事前に相続の流れを理解しておいてほしい。

目次

相続手続きの全体スケジュール とは

はじめに相続の全体スケジュールと手続き内容を紹介する。

No相続手続き内容相続開始からの期日
1死亡届の提出行政へ提出7日以内
2遺言書の有無の確認遺言書の所在を確認1か月を目安
3財産調査相続人の財産額の算出1か月~2か月を目安
4相続人の調査法定相続人になる方の調査1か月~2か月を目安
5相続人の確定(相続放棄・限定承認の確認)調査した相続人から外れる人の確認を行い相続人の確定をする3か月
6被相続人の準確定申告被相続人の生前時の所得税の確定申告4か月以内
7遺産分割協議遺産の分割方法を相続人で話し合う10か月以内
8相続税の計算相続税の申告と納税のために納税額を算出10か月以内
10相続登記各機関にて名義変更10か月以内
11相続税の申告・納税税務署にて相続税の申告と納税を行う10か月以内

相続の手続きは大きく分けて11項目に分けられる。それぞれの内容について次の項で解説する

死亡届の提出

相続が発生した後は7日以内に各市町村へ死亡届を提出することが戸籍法に定められている。死亡届を提出しないと保険や年金を支払い続けることになるうえ、さらに期限を過ぎてしまうと罰則などが発生するため注意してほしい。ただし何かしらの事情で期限内に提出できない場合は「届出期間経過通知書」を提出すれば問題ない。

遺言書の確認

相続が発生した後は、被相続人が作成した遺言書の有無を確認する。遺言書の多くは被相続人が自宅で管理しているケースが多いため、見つけた後はすぐに内容を確認しようとする方が多い。しかし遺言書は家庭裁判所へ検認手続きをしてから開封しなければいけないと民法1004条で定めている。検認せずに開封すると5万円以下の過料が請求されるため注意だ。遺言書に関しては「相続人は遺留分でいくらもらえる?遺留分割合と請求方法について解説」にて詳しく解説している。

財産調査

財産調査とは被相続人の遺産額を調べることである。財産調査は「総遺産額の確認」と「遺産分割協議を行うための作業」「正しい相続税の計算をするため」が目的だ。調べる対象となる主な遺産は以下の通りである。

  1. 預貯金
  2. 不動産
  3. 生命保険
  4. 株式、投資信託、有価証券
  5. 借金などの債務
  6. 貴金属や自動車、ゴルフ会員権など

財産調査は各金融機関や保険会社などに問合せを行い確認する。不動産などは固定資産税納税通知などで所在を確認することが可能だ。財産調査は自身で行うこともできれば、税理士や行政書士、司法書士、弁護士などの士業に依頼することで、よりスピーディーに進めることができる。各士業の作業範囲については「相続の相談は誰にすれば良い?相続手続き別の相談先と費用目安を紹介」を確認してほしい。

相続人の調査

相続人の調査とは「誰が法定相続人なのか」を調べる作業だ。一般的には家族などが法定相続人になるものの、隠し子がいるケースもある。隠し子は被相続人と血族関係であるため法定相続人になる。そのため被相続人の戸籍を遡って調べる作業が必要だ。

相続人の確定

相続人の確定は被相続人の死亡から出生までの全ての戸籍謄本を集め、相続人の相関図を作成する。相続人の相関図について詳しく知りたい方は「相続人相関図は何に使う?使用用途と作成方法を紹介」を確認してほしい。

相続人の相関図を作成する際は、相続人の候補者となる方の戸籍謄本もすべて取得し、「既に死亡している人はいないか」「誰が生存中であるか」「隠し子はいないか」などを確認することで、相続人の確定ができる。

また財産の中には被相続人が生前中、金融機関などから借入しているケースもある。借入金も相続財産と見なされるため、相続した人は返済しなければいけない。しかし人によっては借入金を相続したくない人もいるため、相続放棄・限定承認をする人の確認も同時に行うことが重要である。相続放棄については「債務を相続しなくて済む相続放棄とは?概要と手順を紹介」で詳しく解説している。

被相続人の準確定申告

被相続人が生前の年に所得があった場合は確定を行う。これを準確定申告という。準確定申告を行う被相続人は以下のいずれかの項目に該当している場合である。

  • 個人事業で所得がある場合(事業所得や不動産所得)
  • 給与収入が2,000万円以上の場合
  • 給与収入が2か所からある場合
  • 給与所得や退職所得以外の所得が合計で20万円以上あった場合
  • 公的年金等の収入が400万円以上の場合

上記の項目に該当する所得があった被相続人である場合、準確定申告は必要となる。準確定申告は相続人の代表者が手続きを行うのが一般的だ。確定申告と同様、管轄する税務署にて手続きを行う。確定申告の方法について知りたい方は「相続後に必要な確定申告の事例とは?申告時の必要書類も解説」を参考にしてほしい。

遺産分割協議

相続人の確定が完了した後は、誰がどの遺産を相続するかを相続人同士で話し合う遺産分割協議を行う。被相続人が遺言書を残していれば、一般的には遺言書通りの内容で遺産相続を行うが、遺言書がない場合は遺産分割協議を行わなければいけない。

遺産分割協議は相続人一人でも協議に参加しないと無効となるため、必ず全員参加がポイントとなる。また1人でも反対すると協議がまとまらないため注意が必要だ。

遺産分割協議により遺産の分割方法が決まった後は、遺産分割協議書を作成する。後に相続手続きで使用する重要な書類であるため「相続発生後に遺産分割協議を行う理由とは?協議書の作成方法と注意点を解説」にて詳しい概要や作成方法を確認してほしい。

相続税の計算

遺産分割協議が完了した後は相続税の計算を行う。相続税の計算は自身で行うことも可能であるが、専門的な知識が求められるため多くの方が税理士に依頼している。

また相続税の金額を間違えて少なく納税してしまうと、「過少申告加算税」や「延滞税」などのペナルティが課せられるため、専門的に計算してもらった方が良いだろう。ペナルティついて詳しく知りたい方は「期限がある7つの相続手続きとは?相続税の申告期限が過ぎた際のペナルティを解説」を確認してほしい。

相続登記

相続税の計算ができた後は、相続登記を行う。相続登記とは被相続人の遺産の名義変更のことを指す。不動産の場合は法務局、預金通帳の場合は金融機関など、遺産によって手続きする場所が異なるため注意が必要である。

相続登記は遺言書または遺産分割協議書が無ければ第三者に相続したことを証明することはできず、登記できないため注意してほしい。より相続登記について詳しく知りたい方は「相続登記に必要な8つの書類とは?必ず間違えてはいけない3つの注意点も解説」を確認してほしい。

相続税の申告と納税

最後に相続税の申告と納税を行う。相続税の申告は各相続人が税務署にて手続きを行う。申告が終わった後は納税を行うが、納税書は税務署から届かず、税務署や金融機関の窓口で手続きを行う。そのため納税書が届くと思って10か月の納税期限を過ぎたというケースも多いため注意してほしい。期限が過ぎた際のペナルティについては「期限がある7つの相続手続きとは?相続税の申告期限が過ぎた際のペナルティを解説」にて解説している。

相続手続きは自分でできる?

相続手続きは専門家に依頼するケースが多い一方費用が発生する。そのため自分で手続きすることはできないのだろうかと疑問に思う方もいるのだろう。ここでは自分で相続手続きを行う場合と専門的に依頼した場合のメリット・デメリットを紹介する。

自身で手続きを行う場合のメリット・デメリット

相続手続きを自分で行う場合のメリット・デメリットは以下の通りである。

メリットデメリット
専門家への費用が発生しない
自分のペースで手続きできる
円滑に手続き出来ない可能性がある
相続税の計算を間違えやすい

自身で相続手続きを行う場合の一番のメリットは専門家への費用が発生しないことである。相続手続きは司法書士と税理士に依頼することが一般的であり、費用はおおよそ10万円〜20万円ほどとなる。とはいえ、各士業の方によって金額が異なるため一概には言えない。費用に関して詳しく知りたい方は「相続手続きにかかる費用をすべて紹介!必要書類の取得費用も解説」を確認してほしい。

また専門家に依頼した場合は、自分のペースで手続きできない可能性もある。「いつまでの書類が欲しい」「何日までに申請書に記載してほしい」などと言われることも多い。もちろん相続手続きは10か月以内に申告と納税をしなければいけないため、スピーディーな対応が求められるが、催促されるのが苦手な方や自分のタイミングで手続きしたい方は自身で相続手続きをする方が向いている。

一方、相続手続きを行う方の多くは初心者であるだろう。専門的な知識が求められる相続手続きは、普段勤めている人や初めて行う方にとっては難易度が高い。さらに相続税の計算を間違えると修正申告しなければいけないため、手間と労力がかかってしまう。その点を十分理解した上で専門的に依頼した場合のメリットデメリットを次の項で紹介する。

専門家に依頼する場合のメリット・デメリット

相続手続きを専門家に依頼した場合のメリット・デメリットは以下の通りである。

メリットデメリット
スムーズに手続きを進められる
正しい納税額を算出してくれる
費用が発生する
相続が不得意な税理士もいる

相続手続きを専門家に依頼するメリットとしては、スムーズに手続きを進めてくれるうえ、申告ミスなどを減らせるメリットがある。相続手続きは国税庁が公表している「令和2年事務年度国税庁実績評価書」によると、相続税の申告の税理士関与割合は86.1%と高水準であることがわかる。

多くの方は相続という複雑で手間のかかる作業をプロに依頼しているのだ。ただし専門家に依頼する場合は費用が発生する上に、相続関連が苦手な税理士もいるため、適切な専門家を見つける必要があることは意識しておいてほしい。

相続手続きを行う際の注意点

最後に相続手続きを行う際の注意点を2つ紹介する。

遺産分割協議は揉めやすい

仲の良い相続人であっても、目の前に多額の財産があると揉めるケースも多く、遺産分割協議が円滑に進まない可能性も高い。相続は毎年11万件ほどの課税件数があるのに対し、約1万5千件ほどの裁判が発生している。そのため遺産分割協議にて相続人同士がトラブルになる「争相続」は後を絶たない。

遺産分割協議が進まなければ遺産分割はおろか、相続税の申告と納税も間に合わなくなるため注意が必要である。そのような事例を少しでも無くすために、被相続人には次で紹介する遺言書の作成をおすすめする。

遺言書の作成で円滑な相続を行う

遺言書とは相続人が円滑に遺産を相続をしてもらうために、あらかじめ被相続人が生前中に分割方法を定めた書類である。遺言書があれば遺産分割協議をする必要がなくなるため、争相続の抑止につながる。とはいえ、「特定の方だけに遺産を相続させる」などの理不尽な内容の遺言書であれば、トラブルにもつながりかねない。そのため被相続人は相続人が納得できる遺言書の作成を行うようにしてほしい。

まとめ

今回、相続手続きの全体スケジュールと自分で行う手続きのメリット・デメリットを紹介した。相続手続きは相続が発生してから10か月以内に納税と申告をしなければいけない。

しかし10ヶ月の期間にはさまざまな手続きや作業があるため、自身で手続きはできるものの、普段勤めている人にとっては時間が足りないという意見もある。そのため専門家に依頼し、スピーディーに対応してもらうことをおすすめしたい。

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