相続税の申告をする際は申告書類の他にさまざまな書類が求められ、非常に数も多い。そのためどの書類が手続きに必要となるか分からなくなる方もいるだろう。書類を取得する場所などもあらかじめ把握しておくことで、申告をスムーズに進めることも可能だ。
本記事では相続税の申告に必要な書類一覧を紹介する。これから相続を控えている人や相続税の申告を控えている人はぜひ本記事を参考にして、必要書類の準備を行ってほしい。
相続税の申告に必要な書類
はじめに申告する相続人全員が必要な書類一覧は以下の4つである。
相続税申告書
相続税は各相続人によって納税額が異なるため、各々が相続税申告書を作成して納税する。申告書は最寄りの税務署で取得できるほかに、国税庁のホームページからもダウンロード可能だ。申告書には第1表〜第15表まで記載する項目がある。記載方法については「相続税の申告を自分で行う流れと作成手順を詳しく解説!」で詳しく解説している。
また申告書の様式は年度ごとに異なるため注意してほしい。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要な理由は、相続人の確定をするためであり、相続人との関係性を確認するためだ。被相続人の中には前妻がおり、他の相続人が知らなった隠し子などがいる場合もある。隠し子なども法定相続人に該当するため、被相続人の戸籍謄本が必要となる。また被相続人と申告する相続人が血族関係のある方である証明にもなるため、1つ用意してほしい。
相続人全員の戸籍謄本
被相続人と相続人の関係を証明するのと同時に、身分証と同時に提示することで申告者が本人である旨を証明できる。戸籍謄本は役所やコンビニなどで発行可能である。
相続人全員の印鑑証明書
印鑑証明書は原本を提出する。各相続人2通ずつ必要となるため注意してほしい。印鑑登録していない人は相続税の申告ができないため、申告前に印鑑登録しておくように注意してほしい。
身分と遺産分割関する書類
始めに相続申告する方は身分に関する書類と遺産分割に関する書類を用意しなければいけない。申告時に必要となるため事前に理解して準備しておくべきである。ここでは双方の必要書類を解説する。
身分関係に関する必要書類
身分に関する書類は以下の通りである。
- 被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 相続人全員のマイナンバーカードのコピー(ない場合はマイナンバー番号の写し)
- 相続人全員の身元確認書類
- (マイナンバーカード・運転免許証・パスポート・医療保険の被保険者証など)
遺産分割に関する必要書類
遺産分割に関する書類は遺言書の有無で以下の通り変わる。
遺言書がある場合 | 遺言書のコピー 検認証明書(自筆証書遺言保管制度や公正証書遺言の場合は不要) 相続人全員の印鑑証明書2通 |
遺言書がない場合 | 遺産分割協議書 相続人全員の印鑑証明書2通 |
被相続人が遺言書を残していた場合、遺言書の写しが必要となる。また遺言書は原則裁判所の検認手続きが完了しなければ開封できない。そのため申告時には検認が完了した検認証明書が必須となる。ただし法務局で遺言書の保管をしてくれる自筆証書遺言保管制度を利用した遺言書や公証人が立ち合いのもと作成した公正証書遺言であれば検認は不要となる。
遺言書がない方は、誰がどの遺産を相続するかを証明する遺産分割協議書が必須となる。遺産分割協議書について詳しく知りたい方は「相続発生後に遺産分割協議を行う理由とは?作成方法と注意点を解説」を確認してほしい。
相続財産に関する書類
相続税の申告時は財産に関する書類を用意する。全ての書類が求められる訳でないものの、税務署によっては財産確認をするために提示が求められるケースもある。ここでは財産に応じた書類を紹介する。
不動産
不動産の財産を証明する書類と取得先は以下の通りである。
必要書類 | 取得先 |
登記事項証明書 | 法務局 |
固定資産税納税通知書または固定資産税評価証明書 | 役所 |
公図 | 法務局 |
賃貸借契約書のコピー | 自己保有(ない場合は管理会社へ相談) |
売買契約書(不動産を購入した場合) | 自己保有(ない場合は不要) |
相続税路線価 | 国税庁の「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」よりPDFをダウンロード |
預貯金
預貯金に関しては全ての金融機関の通帳のコピーが必要である。また被相続人が生前時に贈与などが行われた事実を確認するためにも過去5年分が求められるケースもある。
株式・投資信託・非上場株式
株式や投資信託、非上場株式の財産の証明を行う書類は以下の通りである。
必要書類 | 取得先 |
証券会社の残高証明書 | 自己保有または証券会社 |
配当金の支払通知書 | 自己保有または証券会社 |
過去3期分の決算書(非上場株式) | 非上場株式企業 |
税務申告書(非上場株式) | 非上場株式企業 |
生命保険
生命保険の財産証明では「生命保険金の支払通知書」「生命保険証書の写し」が必要となる。自己保管しているケースが多いものの、紛失した場合は生命保険会社に連絡すれば発行してもらえるだろう。
その他
上記の項目以外にも財産として扱われるものが多くある。下記の表は財産としてみなされるものの一例である。
- 自動車・・・車検証
- ゴルフ会員権・・・会員権証書や証書
- 死亡退職金・・・退職金の支払通知書か源泉徴収票
- 貴金属など・・・購入金額や鑑定士の査定書など
特例を受けるための必要書類
相続税には減額処置ができる特例制度がある。特例にはさまざまあるものの、それぞれ必要書類が異なる。ここでは代表的な特例の必要書類を紹介する。なお特例について詳しく知りたい方は「相続税額はどのように計算する?自分でできる相続税シミュレーションを紹介」を確認してほしい。
配偶者控除の必要書類
配偶者控除は配偶者の取得遺産額が1億6千万円または、被相続人の総遺産に対して法定相続割合までは非課税となる特例である。そのため配偶者の方はほとんど相続税を納税しなくて済むだろう。特例を受けるためには、被相続人の戸籍謄本と相続税申告用紙の第5表「配偶者の税額軽減額の計算書」の提出が必要となる。
小規模宅地等の特例の必要書類
小規模宅地等の特例とは土地の評価額を50%~80%圧縮できる特例である。特例を使用することで、被相続人の課税対象額を下げることができ、相続税の節税につながる。相続税の節税は「相続対策は2種類必要!相続人が安心する対策方法を紹介」でも紹介しているため、気になる人は確認してほしい。
小規模宅地等の特例を申請する際は、特別必要な書類はない。先ほど紹介した相続人全員が用意する書類や不動産の財産証明する書類の他に、相続税申告用紙の「第11表11の2の表の付表1〜4小規模宅地等の特例など」を記入するだけとなる。ただし以下のケースでは別途必要書類が追加となるため注意してほしい。
被相続人が生前老人ホームに居た場合 | 施設入所時の契約書 介護保険の被保険者証や障害福祉サービス受給者証など |
相続人が3年以上借家暮らしてある場合 | 借家の賃貸借契約書 |
その他の特例に関する書類
上記の特例の他に18歳未満の未成年者が適用できる未成年者控除や、85歳までの年齢から現在の年齢を差し引いた障害者が適用できる障害者控除などさまざまある。特例を受けるためには障害者手帳などが必要となる。そのため特例を受ける際は一度税務署または税理士へ必要書類を確認してから申告するようにしてほしい。
課税遺産から差し引ける費用の書類
特例以外にも相続税の節税につながる控除がある。「葬式費用」や「債務」は被相続人に課税遺産総額から差し引ける控除であるため、該当する方はぜひ利用した方が良いだろう。相続税の計算については「相続税額はどのように計算する?自分でできる相続税シミュレーションを紹介」にて解説しているため、気になる人は確認してほしい。
ここではそれぞれの必要書類を紹介する。
葬式費用に関する書類
葬式費用として控除できる項目は以下の通りである。
- 通夜費用
- 葬儀に関する交通費や飲食代
- 遺体の搬送費用や死体の捜索費
- 火葬料や埋葬料
- 納骨費用
- お布施費用
上記の費用を控除する際は領収書が必要となる。ただしお布施費用に関しては領収書がないため、メモ書きしたものを提出する。一方で葬式に係わる費用であっても以下の項目は葬式費用として認められないため注意してほしい。
- 香典返戻費用
- 墓石や墓碑の購入代金
- 法会に要する費用など
- 葬式当日以外に発生した費用(49日法要等に係わった費用など)
債務に関する必要書類
金融機関などからの債務は葬式費用同様、被相続人の課税遺産総額から差し引くことができ、相続税の節税につながる。そのため相続税対策の一つとして金融機関の融資を受けてアパートの建築をしている方も多い。相続税の節税について詳しく知りたい方は「相続対策は2種類必要!相続人が安心する対策方法を紹介」を確認してほしい。
しかし必要書類を提出しなければ課税遺産総額から債務額を差し引くことはできないため、申告時には以下の書類を用意してほしい。
- 金銭消費貸借契約書(金融機関とのお金の貸し借りの契約書)
- 借入残高証明書
- 返済予定表
また債務以外にも未払いの公共料金や住民税なども課税遺産総額から差し引くことができる。そのため以下の書類を用意しておこう。
- 相続発生後に支払った医療費の領収書
- 未払いの公共料金の請求書
- 住民税や固定資産税などの納税通知書
まとめ
今回相続税の申告時に必要な書類について解説した。本記事を読んでお分かりになった通り、多くの書類が必要となる。必要書類を理解しないまま手続きを進めてもスムーズに進めることはできない。
さらに書類が不足すると相続税が申告できないなどが発生することにもつながりかねないため、あらかじめ必要書類は理解しておいた方が良いだろう。