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遺産相続には時効がある?手続き別の期限と時効が切れた場合の対処方法を紹介

相続が発生してから10か月以内に相続税の申告と納税をしなければいけない。しかし申告までの間には時効が定められている相続手続きも多いため、あらかじめ理解しておくべきだろう。また万が一時効が過ぎてしまった相続手続きについても事前に把握していた方が良い。

そこで今回、相続に関する時効の項目を紹介する。また時効が過ぎてしまった場合の対処方法についても解説するためぜひ参考にしてほしい。

目次

相続税に関する時効

はじめに相続に関する時効について解説する。

時効とは

相続手続きにおける時効とは「消滅時効」のことを指す。時効には一定期間継続すると他人の物に関する権利を得られる「取得時効」と一定期間権利を行使しないことによって権利消滅する「消滅時効」の2種類があり、どちらも民法で定められている。

消滅時効は相続手続きという点では、期日までに申告や申請を行わない場合、権利を失うことを意味する。ではどのような権利を失うことになるのだろうか。次の項では時効が過ぎた場合のリスクについて解説する。

時効が過ぎた場合のリスク

相続は被相続人の財産を取得することができる。しかし取得するまでにはさまざま手続きがあり、消滅時効が過ぎてしまうと、財産を取得する権利さえも失う可能性もある。中には裁判によって復活する権利はあるものの、決して多いとは言えがたい。また相続人が必ず財産を相続しなければいけないという決まりもない。被相続人の財産の中には負債なども含まれるためである。法定相続人となった人は期日までに相続しない手続きをしない限り、負債も相続することにもなりかねない。そのため相続の時効が成立すると金銭的なリスクが大きくなる。相続人となる方は相続手続き内容ごとの時効は事前に把握しておくべきだろう。

相続手続きに関する時効

では相続手続きに関する時効にはどのような手続きが挙げられるのだろうか。ここでは4つの時効を紹介する。

相続税の申告と還付

相続税の申告は相続開始から10か月以内と定められている。しかし期限内に納税したものの、申告ミスや相続税の計算ミスがあった場合は修正申告しなければいけない。場合によっては相続税を多く支払っていたというケースもあるだろう。多く支払った相続税については還付することが可能となるが相続税の申告期限から5年以内と時効が定められている。

また意図なく過少に相続税を支払っていた場合であっても5年以上経過すれば納税義務も発生しない。ただし故意的にごまかしたり、不正して納税した場合は、時効が7年になる。

相続放棄の時効

相続に関する一切の権利を放棄できる相続放棄は、相続が発生した翌日または相続があったことを知った日の翌日から3か月以内と時効が設定されている。ここでの3か月以内とは、相続放棄の申述書と必要書類を家庭裁判所へ提出することである。郵送で提出する場合、3か月以内に届くようにしなければいけず、届いた事実を証明するためにも内容証明郵便が好ましい。期限内に書類の提出をしなかった場合は単純承認となり、通常通り財産を相続することになる。そのため相続放棄をする方は事前に必要書類を確認しておいた方が良いだろう。相続放棄の申述手順や必要書類について詳しく知りたい方は「債務を相続しなくて済む相続放棄とは?概要と手順を紹介」を確認してほしい。

遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求の時効は、相続があったことを知った日から1年以内と定められている。また相続の発生を知らないままの人であっても、相続発生から10年経過すると遺留分侵害額請求権は消滅する。遺留分侵害額請求とは、最低限の財産を取得できる遺留分を主張する際に、侵害者に対し、遺留分割合に応じた金銭の支払い請求をすることである。

例えば被相続人が「長男に全ての財産を相続させる」などと記載された遺言書を残していた場合、他の相続人は財産を得ることができない。そのような不公平を無くすため、特定の法定相続人には財産を最低限取得できる遺留分の権利を持つ。しかし財産の中には不動産や株など、分割が難しいものもあるため、遺留分に応じた金銭を長男に請求できることが可能だ。

遺留分侵害額請求は特定の相続人が多く財産を相続する際に有効であるが1年以内と期限があるため注意してほしい。遺留分について詳しく知りたい方は「相続人は遺留分でいくらもらえる?遺留分割合と請求方法について解説」を確認してほしい。

相続回復請求権の時効

相続回復請求権の時効は、相続人または法定相続人が相続権を侵害されたことを知った日から5年と定められている。相続回復請求権とは本来相続人ではない人が自分のことを相続人であると勘違いし、被相続人の財産を保有している場合、本来の相続人は返還するように請求できる権利である。本請求権を使用するケースは極めて稀であるものの、100%ありえないとは言えがたい。また侵害されたことの事実を知らなかった場合、相続開始から20年で時効となる。

生前贈与における贈与申告の時効

贈与税の時効は原則6年と定められている。相続税の節税方法の一つとして、被相続人が生前中に財産を受贈者へ無償で贈与し、相続税の課税対象となる財産を減らす生前贈与という方法がある。生前贈与を含めた相続税の節税方法は「相続対策は2種類必要!相続人が安心する対策方法を紹介」で紹介している。

生前贈与を利用し、年間110万円以上の財産贈与を行った場合は贈与税を支払わなければいけない。贈与税は翌年の確定申告で納税するが、相続税同様多く支払った場合の還付や過少に納税した場合は贈与税の申告期限から6年以内と期限が設定されている。また悪質な場合や不正があった場合は7年となる。

時効が過ぎてしまった時の対処法

時効が過ぎてしまった場合、手続き内容によっては対処可能な場合もある。ここでは4つ紹介する。

相続放棄の時効が切れてしまった場合

相続放棄の時効が切れてしまった場合、家庭裁判所へ事情を説明することで例外的に認められる可能性もある。過去に最高裁で時効が過ぎた相続放棄が認められた判決もあった。とはいえ、本来時効が過ぎた場合は相続放棄の権利を失うため、正当な事由があり、裁判所の判決次第となる。近年では新型コロナウイルスによる影響も加味される可能性もあるだろう。詳しくは弁護士へ相談してほしい。

遺留分侵害額請求権の時効が切れてしまった場合

遺留分侵害額請求権の時効が切れてしまった場合、原則対処方法はない。遺留分侵害額請求は1年以内に1度でも請求すれば法的効力が発生する。侵害された人によっては、請求を無視する場合もあるだろう。しかし遺留分侵害額請求した時点で、侵害された相続財産は、請求者に帰属されることになっている。そのため時効が成立する前に1度でも請求しておくことが望ましいだろう。

相続回復権の時効が切れてしまった場合

相続回復権の時効が切れてしまった場合、正当な事由をもって申立てを行えば、裁判所の判決で時効成立を主張できないようにする可能性もある。過去の裁判事例では以下の要件が該当し、相続回復件の時効成立が無効となった。

  • 被相続人の遺産の全てを他の相続人へ開示しなった
  • 遺産分割協議を行わず、無断で遺産を相続した
  • 法定相続分より多く財産を相続している

上記の事例は昭和53年12月20日に最高裁で審判され、最終的には期限が過ぎた相続回復権が本来の相続人に戻った事例である。とはいえ、相続回復権の時効は必ず復活するとはいえず、正当な事由が必要である。そのため相続回復権の時効が切れた場合は弁護士へ相談した方が良いだろう。

相続税の時効が切れてしまった場合

相続税の納税期限である10か月を過ぎてしまった場合、延滞税などのペナルティが課せられる。そのため本来支払う予定だった相続税の他に罰則金を支払うことになるだろう。また過少に申告した場合は「過少申告加算税」、無申告の場合は「無申告加算税」などが課せられる。ペナルティについては「期限がある7つの相続手続きとは?相続税の申告期限が過ぎた際のペナルティを解説」で詳しく解説している。

しかしペナルティを支払いたくない人は、概算の相続税額で申告と納税することで免れる。相続手続きをすすめるうえで、遺産分割協議が完了せず、正確な相続税を算出できないケースも多い。そのような場合、概算で相続税を計算し、多めに納税することも可能である。多く支払った分に関しては後ほど還付請求することも可能だ。また「申告期限3年以内の分割見込書」の提出も一緒に行った方が良い。3年以内に遺産分割協議を完了させるため、特例の適用を認めてもらえる書類である。

相続税にはさまざまな特例があり納税額を圧縮することが可能だ。しかし10か月を過ぎると使用できなくなる特例もあるため、必ず提出するようにしてほしい。特例について詳しく知りたい方は「相続税額はどのように計算する?自分でできる相続税シミュレーションを紹介」を確認してほしい。

まとめ

今回、相続に関する時効について解説した。相続手続きにはさまざま時効があり、期限が過ぎると原則権利を失ってしまう。例外ももちろんあるが、裁判所の判決次第となってしまうため、可能性としては高いとは言えがたいだろう。

そのため相続手続きを進める際は、あらかじめ時効が設定されている手続きを理解しておく必要がある。それでも奇岩が過ぎてしまった場合は即座に弁護士へ相談するようことをおすすめする。

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